◆医学は、身体に起こる出来事を一点のせいにする
医学の基礎であるところの、健康、病気の定義を確認するところから出直しますよ。何度もくり返していますように、医学は、健康を正常であること、病気を異常であることと独自に定義づけてきたということでしたよね。
〈参考:そのことについては下の記事で書きました。〉
さて、そんな医学は、ひとを、正常もしくは異常と判定したあと、そのひとがそのように正常もしくは異常であることを、身体のなかの一点のせいにします。たとえば、みなさんが歩いているのを、医学がいま正常と判定したとしますよ。すると、医学は、そのようにみなさんが正常な歩行をしているのを、みなさんの身体のなかの脳という一点のせいにします。みなさんの脳が、歩くという運動をとることを企画立案し、それを実行するよう、電気信号の形で命令を、神経を介して手足の筋肉に送り、動かしている、ということにします(ほら、医学は、脳が歩行を司っていると表現しますよね?)。
いっぽう、その歩行を、医学が異常と判定したとすれば、どうでしょう。
医学は、そのように歩行が異常であるのを、身体のなかの一点のせいに、たとえば、脳のなかの一点のせいにします。たとえば、脳梗塞なんかのせいに、ね?
するとどうなるか。
脳のなかのその一点は、歩行が正常に起こるのを妨げていることになりますね?
したがって、裏返して言えば、こういうことになります。そのひとは、脳のなかのその一点によって、歩行が正常に起こるのを妨げられている、って。
いま医学はこうすると言いました。まとめます。
- ①ひとを異常と判定する。
- ②そのように異常であることを、身体のなかの一点のせいにする。
- ③すると、そのひとは、その一点によって、正常になるのを妨げられていることになる。
つづめて言えば、身体に起こる出来事を身体のなかの一点のせいにする(上記②)医学にとって、ひとを異常と判定する(上記①)というのは、そのひとのことを、身体のなかの或る一点によって、正常になるのを妨げられている(上記③)、と見なすことである、ということですね。
いま、つぎのふたつが同義であることが確認できました。
- 異常
- 身体のなかの或る一点によって、正常になるのを妨げられている
では、ここで、最初に、頭の隅っこに置いておくことにしたものを、とり出してみてくれますか。さあ、思い出してみてくださいよ。冒頭で、障害という言葉にはふたつの意味があると確認しましたよね。そのふたつを再掲します。
- A.障害物
- B.(障害物によって)何かが起こるのが妨げられている状態
いま、ひとを異常と判定するというのは、そのひとのことを、「身体のなかの或る一点によって、正常になるのを妨げられている」と見なすということだと確認しました。そのように「〜によって、何かが起こるのが妨げられている」のを、医学は、いま再掲しました、世間での語法Bにならって、障害と呼ぶというわけですよ。
2021年6月29日に文章を一部修正しました。