みなさんがおそるおそる、精神科を初めて訪れ、診察室でこう言ったと仮定してみましょうか。
「ブス、ブスという声が聞こえてきて、うるさくて堪らないので、整形手術をしてほしい!」って。
そのとき、そう言うことでみなさんは、目のまえに座っている精神科医に、何を訴え、何を要望しているわけでしょうか?
みなさんはそのとき、自分の身に「異常」が起こっていると訴え、自分を「正常」にしてほしいと要望しているわけでしょうか。
でも、ほんとうに、みなさんがそのとき訴え、要望しているのはそうしたことでしょうか? 「ブス、ブスという声が聞こえてきて、うるさくて堪らないので、整形手術をしてほしい」と言うことで、そのときみなさんがほんとうに訴えているのは単に、苦しい、ということではないでしょうか。その苦しさが手に負えないということではないでしょうか。そして、苦しまないで居てられるようにしてほしいと要望しているだけなのではないでしょうか。
勇気をふりしぼって初めて訪れた精神科で、精神科医をまえに、みなさんが争点にしているのは、あくまで「苦しくないか、苦しいか」であって、「正常か、異常か」ではないのではないでしょうか。
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