◆ひとを正常もしくは異常と判定するというのは
いま、異常気象と、「ヤツ壊れてるよ」のふたつを例に、異常という言葉の意味を確認しました。ここから、ひとを正常もくしは異常と判定するというのは、こうすることだと言えるようになりました。
ひとを正常と判定するというのは、
- そのひとのことを、こちらがもっている「ひととはコレコレこういうものだ」というイメージに合致していると見、
- その「イメージに合致している」ことを問題無しとすること。
いっぽう、ひとを異常と判定するというのは、
- そのひとのことを、こちらがもっている「ひととはコレコレこういうものだ」というイメージに合致していないと見、
- その「イメージに合致していない」ことを問題視すること、
である、って。
たとえば、ある高校生が、こう訴えたとしますね。家の自室で勉強しようとしても、同級生が「うぜえ」とか「死んじまえ」とか言ってきて、勉強にならない、って。道で通りすがりに、知らないひとが「うざいぞ」「このバカ」と僕に言ってくる、って。
★★いま、下の記事の高校生を例にとりました(参考)★★
すると、それを聞いた精神科医は、その高校生のありようを異常(幻聴)と診断し、統合失調症と名づけますね?
そのように高校生を、異常と診断するというのは、どうすることか。それは、その高校生のありようを、医学がもっている「ひととはコレコレこういうものだ」というイメージに合致していないと見るということではないでしょうか。
そして、その「イメージに合致していない」ことを問題視することではないでしょうか。
◆意味がわかった途端、胸中に兆す疑念
正常、異常の言葉の意味が、確認できました。
医学は、こうした意味をもつ正常、異常という見方をつかって、健康と病気をそれぞれ独自に定義づけてきたということでしたよね。ふだんのみなさんが、やれ健康だ、やれ病気だとしきりに言うことで争点にするのは、「苦しくないか苦しいか」である。ところが、(身体をあやまって機械と見なす)医学は(快いとか苦しいとかいったことの意味が理解できず)、健康を正常であること、病気を異常であることと独自に定義づけてやってきたんだ、って。
だけど、こうして、正常、異常という言葉の意味を確認するに至ったみなさんは、いま、丸太で胸をドンと突かれたような強い驚きを覚えることになっているのではないでしょうか。
あれ? 正常、異常という言葉の意味がこういうものだとすると、異常な人間なんてこの世にただのひとりも存在し得ないということになるじゃないか、って。
ひとはみな正常ということになるじゃないか、って。
でも、今回は、正常、異常の意味を確認したところで終わっておきますよ。
いま最後に急いで詰め込んだことについては、また次回に詳しく考えてみることにします。
2021年3月9日に文章を一部修正しました。
今回の最初の記事(1/3)はこちら。