◆異常気象という言葉を例に考えてみる
最近は、「異常気象」という言葉を、いろんなひとがさも当然のように口にします。この「異常気象」という言葉を例に考察するところからはじめましょうか。
ひとは、その「異常気象」という言葉で、果して何を表現しようとしているのか?
どなたもみな、気象というものにたいし、「気象とはコレコレこういうものだ」というイメージをもっていますよね。たとえば、俺の住む地域でいえば、気象は一年を通して温順で、雨はそれほど多くはなく、台風等の被害も少なくて、非常に過ごしやすい、といったイメージがあります。
みなさんもそんなふうに、みなさんの住む地域の気象について、「気象とはコレコレこういうものだ」というイメージをもっているのではありませんか。
そんなみなさんが、たとえば、最近の夏の気象を異常と言うとしますね?
それは、何をどうすることか。
それは、最近の夏の気象のありようが、みなさんのもっている、「夏の気象とはコレコレこういうものだ」というイメージに合致していないと見ることではありませんか。
そして、その「イメージに合致していない」ことを、問題視することではありませんか。
いま、最近の夏の気象を、異常、と判定するというのは、こうすることではないかと言いました。
- 最近の夏の気象を、みなさんのもっている「夏の気象とはコレコレこういうものだ」というイメージに合致していないと見、
- その「イメージに合致していない」ことを、問題視すること、
である、って。
では、いま言ったことを、もうひとつ別の例でも、確認してみましょう。
◆いつもむっつりしている男が無邪気にはしゃいでいる
今度は、いつもむっつりしているひとがいるとしますよ。そのひとが、あるとき、無邪気にはしゃいでいた。その姿を目の当たりにして、「ヤツ、壊れてるよ」と、自分のこめかみの辺りを叩きながら言うゲスイ人間がいるとしますね。そのゲスイ人間は、珍しく、はしゃいでいる、そのひとのありようを、異常と言っているわけですね?
さあ、考えてみましょう。珍しく、はしゃいでいる、そのひとのありようを、異常と見なすというのは、何をどうすることか。
それは、無邪気にはしゃいでいるそのひとのありようを、こちらがもっている「ヤツはコレコレこういう人間である」というイメージに合致していないと見ることではありませんか。で、その「イメージに合致していない」ことを問題視することではありませんか。