「神のお告げが聞こえた」を理解する3/5

 追い詰められてた間さんは、午前3時頃、畳の目をジーっと見ているうちに突然思い立った。「もう東京に行かないとダメだ。行ってひとつ勝負してみよう」(現実)。だけど、その間さんには、自分がそんなことを思い立ったはずはないという「自信」があった。


 こんなふうに「現実自信とが相反するに至った場合、ヘイワード、お前さんなら、どうする?


 そこでお前さんが打てる手は、おそらく、次のふたつのうちのいずれかだよ。

  • A.その相反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
  • B.その相反を解消するために、「現実」のほうを、「自信」に合うよう修正する。


 お前さんなら、どっちとるね? Aの「自信のほうを訂正する」手? その手をとって、自分が、東京に行って勝負しようと思い立つほど、追い込まれているんだと自覚する?


 けど、そのとき間さんがとったのは後者Bの「現実のほうを修正する」手だった。間さんは、自分が東京に行って勝負しようと思い立ったはずはない、とするその「自信」に合うよう、「現実」をこう解した。


 突然、「東京に出なあかん。東京へ出てひとつ勝負してみい」という声が聞こえてきた、って。


 いま言ったことをまとめてみるよ。

  • ①東京に行って勝負しようと思い立つ(現実)。
  • ②自分がそんなことを思い立ったはずはないという「自信」がある(現実と相反している自信)。
  • ③その自信に合うよう、現実をこう解釈する。「突然、『東京に出なあかん。東京へ出てひとつ勝負してみい』という声が聞こえてきた」(現実修正解釈


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2021年8月13日に文章を一部修正しました。


統合失調症と診断されたひとたちの”症例”をとりあげ、そうした”症例”が、医学の言うところとはまったく反対に、誰にでも「理解可能」であることを、下のシリーズで確認しています(つまり、人間理解力が不足している医学が、ほんとうは理解できるそのひとたちのことを、おのれに都合良く、理解不可能と決めつけてきただけであることを確認しています)。

 

「神のお告げが聞こえた」を理解する2/5

 ヘイワード、読めた? 「営業先の岡山の旅館で寝ていたところ」「午前3時ごろにふと目が覚めて、畳の目をジーッと見ていると突然、『東京に出なあかん。東京へ出てひとつ勝負してみい』という声が聞こえた」とあったろ?


 追い詰められてた間さんは、その旅館で、午前3時頃に目が覚め、畳の目をジーッと見ているうちに突然、「もう東京に行かないとダメだ。東京に行ってひとつ勝負してみようと思い立ったのかもしれないね。


 でも、間さんにしてみれば、自分がそこで、そんなことを思い立ったりするはずはなかった。


 いや、いっそ、間さんのその見立てを、語弊があるかもしれないけど、こう言い換えてみることにしようか。そのとき間さんには、自分が東京へ出て勝負しようと思い立ったはずはないという自信があったんだ、って。


 ヘイワード、あたしの言ってること、わかってくれてる? いま、こう言ったんだよ。


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2021年8月13日に文章を一部修正しました。


統合失調症と診断されたひとたちの”症例”をとりあげ、そうした”症例”が、医学の言うところとはまったく反対に、誰にでも「理解可能」であることを、下のシリーズで確認しています(つまり、人間理解力が不足している医学が、ほんとうは理解できるそのひとたちのことを、おのれに都合良く、理解不可能と決めつけてきただけであることを確認しています)。

 

「神のお告げが聞こえた」を理解する1/5

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 ヘイワード、お前さん、神のお告げ聞いたことある? 周りに、聞いたことのあるひと、いない?


 あたし? ないよ。なぁ〜んにも聞こえない。カミさんが喋りかけてきてたって、聞き逃しちゃうくらいだよ。


 神のお告げ、どんなだろうね?


 ねえ、ちょっと聞いてよ。あのね、あたしの甥っ子にね、歌手やってる友人がいてね、あるとき、その友人に、歌手になろうとしたキッカケを訊いたんだって。


 友人、甥っ子になんて答えたと思う?


 河原で不意に「歌手になれ」というお告げを聞いたって言うんだって。


 そのことを、いまこれ読んでて、思い出してさあ。


 ほら、ごらんよ、間寛平さんのことがここに書いてあるだろ? 若い頃、友人の借金の連帯保証人になって、借金を1億円くらい背負うことになった。そして所属先の事務所にも見放され、自力で地方巡業するしかなくなった。で、そんなときに巡業先で、神のお告げを聞いたんだ、って。

「東京に出なあかん」神のお告げ

 そんな寛平が39歳にして上京を思い立つ。きっかけは、営業先の岡山の旅館で寝ていたところ、“神のお告げ”があったからだという。


その夜、午前3時ごろにふと目が覚めて、畳の目をジーッと見ていると突然、「東京に出なあかん東京へ出てひとつ勝負してみいという声が聞こえた


さらにこのあと夜が明けきらない時間にもまた、「はよ東京に出る支度をせんかとの声があったのだとか。その朝、急いで大阪に帰って吉本の本社に赴くと、退社して東京に行くと申し出た。


結局、吉本側からは引き止められ、東京事務所に入るという形で東京進出が決まる。夫人は、寛平の唐突な決断をすんなり聞き入れ、かつて追っかけをして知り合った萩本欽一にも紹介してくれた。萩本は、ある関東ローカルの番組に口を利いてくれ、寛平は大阪に家族を残して単身上京したその日にレギュラーが1本決まる。


(出典)
■近藤正高『“アメマ~”間寛平71歳に 「連帯保証人」1億円の借金地獄を救った“神様のお告げ”とは』
https://bunshun.jp/articles/-/39087
■最終アクセス日:2020年11月21日
※ただしゴシック化は引用者による



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2021年8月13日に文章を一部修正しました。


統合失調症と診断されたひとたちの”症例”をとりあげ、そうした”症例”が、医学の言うところとはまったく反対に、誰にでも「理解可能」であることを、下のシリーズで確認しています(つまり、人間理解力が不足している医学が、ほんとうは理解できるそのひとたちのことを、おのれに都合良く、理解不可能と決めつけてきただけであることを確認しています)。